「基本にならったコピー」は通用しない

コピーライティングにはいくつか「基本の法則」といわれるようなものが存在します。そうした基本を抑えておくことである程度効果のあるキャッチコピーを作成することはできるでしょう。しかし、それだけではカバーすることのできないものがあります。それは「ターゲットに合ったコピー」という部分です。

コピーライティング講座や本では、万人に受けるコピーの書き方しか教えてくれません。それぞれの会社にターゲットを聞いて、その会社に合ったコピーを考えるのはコンサルティングやコピーライターの専門的なお仕事ですから。(ちなみに弊社ではそういった案件もお請けできますのでぜひご相談くださいませ)

そこで今回はターゲットを「女性」に絞った上で、キャッチコピーを作るときのポイントをご紹介していきます。弊社は女性向け商品・サービスを得意としています。社員は社長を含め(今のところ)全員女性ですし、それぞれが女性向けの商品・サービスに関わってきた経歴があります。筆者もこれまで女性向けメディアに長く携わってきたため、女性に刺さる言葉については日々考えてきた次第です。そんな経験から、女性に向けたキャッチコピーを書く上で気にするべきことを語らせてください。

女性をターゲットにしたキャッチコピーのポイント

ではここからは、女性をターゲットにした商品・サービスのキャッチコピーを考える際のポイントをご紹介していきます。

①ストーリーを連想させる

女性は結果よりもその結果に至るまでの経緯を重視する、プロセス志向であるという話は聞いたことがあるのではないでしょうか。女性がある出来事を話すとき、結果だけでなくそれまでに起こったことや感じたことをすべて話したがる傾向にあるのです。

プロセス志向は、言い換えると「ストーリー志向」ともいえます。物語の結末ではなく、なぜその結末に至ったのかというストーリーを重視しているのです。

つまり、そのストーリー志向に働きかけることができれば、女性から共感を得ることができるということ。その好事例ともいえるのがルミネが採用している広告コピーでしょう。

泣いたのは、わたし。泣き止んだのも、わたし。

LUMINE広告より(2021winter)

ルミネはファッションやコスメ、フードなどを扱う店舗が集まった商業施設。一見、このキャッチコピーだけでは来店や購買につながらないように見えてしまいます。しかし、ルミネの広告コピーは新しく打ち出されるごとに、女性の心を掴んでいるのです。

その理由の1つが、このコピーからストーリーを連想できることでしょう。コピーの中にいる主人公には何か悲しいことがあり、そして乗り越えてきた。そのプロセスについて、いくつものストーリーを思い浮かべることができます。そうして自分の中に思い浮かべたストーリーに共感できたとき、このキャッチコピーが心の中に残るのです。

②自分だけのためのコピー

どんなに万人に向けたキャッチコピーだとしても、書くときは誰か一人を思い浮かべる必要があります。なぜなら、「自分ごと」として捉えられないから。大勢を思い浮かべながら書いたコピーは、誰にも刺さることがありません。

もちろん商品やサービスを多くの人に買ってほしいという気持ちはどの企業にもあるでしょう。しかし、購入するのはあくまでも個々人。そのひとりひとりに刺さらなければ、キャッチコピーは意味をなしません。特に女性向けのキャッチコピーで重要なのは「共感」です。共感されるためには「これは私のための言葉なのかも」と思わせる必要があります。

例えばダイエット商品のキャッチコピーを考えるとき。「誰でもかんたんに痩せられます!」と書かれているよりも「コロナ禍で在宅ワークが増えて一気に体重の増加を感じている方、運動しなくても痩せられる方法があるんです!」と書かれていたほうが具体性を感じますよね。前者はターゲットは広いものの、具体性がないためスルーされる確率が高くなってしまいます。一方後者は「在宅ワークをしていて太った人」にターゲットが絞られるものの、その分心当たりがあるワードにハッとする人が増えるでしょう。そして、「これは私だけのための商品だ」と感じることができるのです。

③漢字をひらいてやわらかく

女性は“やわらかい”文章を好む傾向にあります。文章のやわらかさを表現する方法はいくつかあるのですが、代表的なものが「漢字をひらく」ということ。要するに、「ひらがなで書け」ということです。以下の文章を見てみてください。

今すぐ痩せたいなら運動がお勧めです

いますぐ痩せたいなら運動がおすすめです

どちらも同じ文章ですが、下のほうがやわらかい印象を受けませんか?こうして漢字をひらくことで、文章をよりやわらかく、より女性好みに仕上げることができるのです。

この原理を使ったのがユニ・チャームのキャッチコピー。

やさしさをつくる。やさしさでささえる。

ユニ・チャーム株式会社

これを漢字表記にすると「優しさを作る。優しさで支える。」と堅い印象になってしまいます。潔くすべてをひらがな表記にすることで、共感を得ることに成功した例といえるでしょう。

また同じ原理で句点(、)を使うというテクニックも効果的です。

明日天気になりますように。

明日、天気になりますように。

句点を1つ入れるだけで、文章がより叙情的に見えます。こうした詩的な文章は女性の心をつかみやすいと言われているのでぜひ実践してみてください。

④口にしたくなる気持ちよさ

文章はあくまで文章。平面的で音のないものではありますが、実は文章を読むとき、心のなかでは音読をしているという人も多くいます。特にキャッチコピーなどの短い文章は心の音読をする人が多いのです。

音読をするということは、文面だけでなく音感も大事になってくるということ。つまり語呂が良い文章を作ることが重要になってきます。

語呂の良さにはいくつか種類があります。まずは文字数について。昔から語呂が良いと言われているのは「七五調」と呼ばれるもの。「4・4・5」「4・3・5」「3・4・5」の文字数で表現された言葉は自然と受け入れられ、気持ちよく心に染み入るのです。

「墾田永年私財法(こんでんえいねんしざいほう)」という言葉が日本史で出てきたとき、その語感が気持ち良いなと感じた経験はありませんか?事実、「墾田永年私財法」は日本史で好きな言葉ランキングに入ることも多いようです。この言葉の気持ちよさは「4・4・5」の法則に当てはまることが原因でしょう。

この七五調を使ったキャッチコピーがこちら。

本を売るならBOOKOFF

ブックオフグループホールディングス株式会社

ほんを(3)うるなら(4)ぶっくおふ(5)と、「3・4・5」の法則に則ったキャッチコピーとなっています。なんとなく読んでいて気持ちが良いですよね。これが七五調の魅力なのです。

キャッチコピーすべてを七五調に当てはめる必要はありませんが、作ったコピーは必ず音読をすること。口に出した時に気持ちよくなければ、女性の共感は得られないと思ったほうが良いでしょう。

⑤ベネフィットを強く打ち出す

ベネフィットとは、「利益」や「恩恵」を表す言葉です。キャッチコピーを見て、商品やサービスからどのような利益や恩恵を受けることができるのか、という部分を打ち出すことが重要となってきます。

よくベネフィットと対比して使われる言葉が「メリット」というもの。メリットはその商品やサービスの「売り」の部分。「長所」といってもいいでしょう。このメリットとベネフィットを混同して考えてしまう人が多いため、具体例を提示してご説明します。

例えばとある「ファンデーション」のメリットとデメリットを挙げてみましょう。

メリット:カバー力がある、色展開が豊富、塗りやすい
ベネフィット:褒められるような肌になる、メイクの時間が短縮できる

いかがでしょうか。メリットはファンデーション自体の長所であり、ベネフィットはそのファンデーションを使うことでユーザーが体験できる恩恵であることがわかるかと思います。

女性向けのキャッチコピーで打ち出すべきは「ベネフィット」。なぜなら、ストーリーを連想しやすいから。そして、自分ごととして想像しやすいからです。①と②でご説明した部分が、ここでつながってくるわけです。

先ほどのファンデーションで考えてみましょう。

塗りやすくカバー力もばっちり!色の展開も豊富です。

メイク時間は短縮できるのに、褒められ肌が手に入るファンデーション

さて、どちらに惹かれるでしょうか。ぜひ周りの女性にアンケートを取ってみてください。

そんなベネフィットを打ち出すというテクニックを使ったキャッチコピーがこちら。

ごきげんをつくる。

LuLuLun株式会社グライド・エンタープライズ

LuLuLunはフェイスマスクのブランド。肌が潤う、いい香りがするなどフェイスマスク自体のメリットではなく、それを使うことで気分が良くなるという部分にフォーカスしています。

ターゲットの心に残るキャッチコピーを

人が受ける情報の8割は視覚から入ってくるといわれています。つまり目で見て感じるキャッチコピーには、大きな力があるのです。

良いキャッチコピーは人の心に深く残ります。ふとした時に思い出したり、口に出したりしてしまうものなのです。そうして商品やサービスの購買、情報の伝達につながっていきます。

特に女性に向けたキャッチコピーを考える際は、ぜひ今回ご紹介した5つのポイントを意識してみてください。女性から共感を得られるコピーのヒントになるはずです。

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LELクリエイティブチーム
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株式会社LELのクリエイティブチームが作成している記事です。
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