「動画は予算に余裕のある大企業がやるもの」というイメージ、まだ残っていませんか?

イギリスの調査会社が発表した最新のレポートでは、企業の91%がすでに動画をマーケティングに取り入れているという結果が出ています。ただ、これは海外企業を中心とした調査の数字で、日本国内の実態とは少し様子が違います。

この記事では、2026年に発表された海外の調査データと、日本国内のBtoB企業を対象にした調査データの両方を紹介しながら、動画マーケティングがどこまで浸透しているのかを整理していきます。

なぜ2026年、動画マーケティングが「当たり前」になったのか

数年前まで、動画マーケティングは「予算に余裕のある企業がやるもの」というイメージがありました。しかし、スマートフォンで手軽に動画を見る習慣が定着したことに加え、SNSやYouTubeが動画を中心とした機能を次々に追加してきたことで、動画は「特別な施策」から「発信の基本」へと位置づけが変わりつつあります。

こうした背景には、スマートフォンの通信環境が整い、いつでもどこでも動画を再生できるようになったことも関係しています。

文章や写真だけの発信に比べて、動画は「見ているだけで情報が入ってくる」という手軽さがあります。忙しい合間に情報収集をするユーザーとの相性がよいことも、活用が広がっている理由のひとつです。

海外調査では、動画を活用する企業は91%に

動画マーケティングの調査で知られるイギリスの動画制作会社Wyzowl社が2026年に発表したレポートによると、企業の91%がすでに動画をマーケティングツールとして活用しています(Wyzowl「Video Marketing Statistics 2026」)。

2025年は一時的に割合が下がったものの、2026年は過去最高水準に並ぶところまで戻ったとされており、「動画をやっていない企業」のほうが少数派になりつつあることが分かります。

ただし、この数字を読むときに押さえておきたい前提があります。この調査は2025年後半に266人を対象に実施されたもので、回答者はマーケティング担当者と一般消費者が中心。日本国内の企業を対象にした調査ではありません。

また、調査を実施しているWyzowl社自体が動画制作を手がける会社であるため、動画に関心の高い層が回答者に集まりやすい点も、あわせて考えておきたいところです。

とはいえ、業種や規模を問わず動画が選ばれる理由はシンプルです。文章だけでは伝えにくい商品の使い方や、会社の雰囲気、担当者の人柄といった情報を、動画なら短い時間でまとめて伝えられるからです。

日本のBtoB企業では「効果を実感」は60.6%

では、日本国内ではどうなのでしょうか。

動画制作サービスを提供するアルファノート株式会社が2026年6月に実施した調査では、動画マーケティングを実施しているBtoB企業の担当者500名のうち、60.6%が「効果があった」と回答しています(内訳は「期待以上の効果があった」14.0%、「ある程度の効果があった」46.6%)。一方で「あまり効果は感じられなかった」が19.8%、「全く効果はなかった」が5.6%という結果でした(ムビサク/アルファノート株式会社「BtoB企業における動画マーケティングの実態調査」)。

海外調査の「82%が良いROI(投資対効果。かけた費用に対してどれだけ成果が返ってきたかを表す指標)を実感」という数字と比べると、日本のBtoB企業のほうが慎重な評価をしていることが読み取れます。

同じ調査では、動画制作の予算についても聞いており、1本あたり「10万円未満」が28.4%で最多という結果でした。次いで「30万円〜50万円未満」が23.0%、「50万円〜100万円未満」が18.8%と続きます。

「動画制作には数百万円かかる」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、実際には10万円台以下で運用している企業が一定数いるということです。

活用シーンでは「YouTube・SNS」が48.6%で最多、次いで「WEB広告」46.0%、「自社サイトへの掲載」31.4%となっており、日本のBtoB企業でもYouTubeやSNSが動画活用の中心になっていることが分かります。

効果を感じている企業は82%、ただし前年からは低下

「動画を作っても、本当に効果があるのか分からない」という不安を持つ担当者も多いのではないでしょうか。

Wyzowlの調査では、動画マーケティングを行っている企業の82%が「良いROIが得られた」と回答しています。さらに93%が「ブランドの認知が高まった」、同じく93%が「商品・サービスへの理解が深まった」と回答しました。

ただし、この数字は前年から下がっている点も見ておきたいところです。ROIについては前年の過去最高93%から82%へと11ポイント低下しており、ブランド認知についても前年の96%から93%に下がっています。

水準としては依然として高いものの、「動画を出せば必ず成果が出る」という時代ではなくなり、内容や届け方によって差が開き始めていると読むこともできそうです。

それでも、動画が「売る」ためだけでなく、「知ってもらう」「分かってもらう」段階で力を発揮していることは、数字からも読み取れます。

特に、初めて会社を知る人にとっては、文章よりも動画のほうが「どんな会社か」「どんな人が対応してくれるのか」をイメージしやすく、問い合わせへのハードルを下げる効果も期待できます。

動画を見る人自体が増えている

企業側の活用が進む一方で、視聴者側のデータも見ておきましょう。

海外の調査会社Demandsageによると、インターネット利用者がオンライン動画を視聴する時間は1週間あたり平均17時間とされています。また同社は、世界全体で見た1日あたりの動画視聴時間を平均84分と紹介しています(Demandsage「Video Marketing Statistics」)。

この2つは調査の取り方が異なる別々の数字ですが、いずれにしても多くの人が日常的に動画を見る習慣を持っていることを示しています。

「自社の発信を動画にしても、見てもらえるのか」と心配になる必要はなさそうです。

短尺動画(30秒〜2分)が支持される理由

動画の長さについては、短尺動画への注目度が特に高くなっています。Wyzowlの調査では、マーケターの71%が「30秒〜2分程度の動画がもっとも効果的だ」と回答しました。

「短い動画のほうが手軽に作れそう」というだけでなく、最後まで見てもらいやすいという点も見逃せません。

動画は途中で離脱されてしまうと内容が伝わりきらないため、伝えたいことをできるだけ早い段階で提示する構成が、短尺・長尺を問わず意識されるようになってきています。

AIの活用は広がる一方、コストの実感は割れている

動画制作の現場で急速に広がっているのが、AIツールの活用です。Wyzowlの調査では、動画制作・編集にAIツールを取り入れているマーケターは63%にのぼり、前年の51%から大きく増加しました。

「AIが普及したなら、制作コストも下がっているのでは?」と考えたくなるところですが、実感としてはまだ割れているのが実態です。

同じ調査で制作コストの変化を聞いたところ、「安くなっている」と感じているのは30%にとどまり、「変わらない」が32%、「高くなっている」が38%で最多という結果でした。

また、動画を活用していない企業に理由を聞くと、「必要性を感じない」と並んで「費用が高すぎる」が24%で最多となっています。

AIツールの普及は進んでいるものの、それがそのままコスト削減の実感につながっているとは限りません。「AIを使えば安くなる」と単純に期待するのではなく、どの工程をAIに任せるかを見極めることが大切になりそうです。

「お客様の声」動画も定番の存在に

動画の種類別に見ると、Wyzowlの調査では、SNS向け動画(69%)、説明・解説動画(68%)に次いで、「お客様の声(テスティモニアル)」を紹介する動画を制作している企業が57%と多くなっています。

第三者の率直な感想は、企業自身が発信する情報よりも信頼されやすい傾向があります。

撮影自体も、長時間のインタビューを収録する必要はなく、短い感想を数本つなげるだけでも十分に成立するため、比較的取り入れやすい形式だと言えるでしょう。

なお、日本のBtoB企業を対象にした調査でも、動画活用の効果として「商談時における製品理解の促進」が32.4%、「お問い合わせ・リード獲得数の増加」が30.6%と上位に入っており、商談や営業の場面で動画が使われている実態がうかがえます。

動画の効果、何で測っている?

効果測定の方法にも特徴があります。Wyzowlの調査によると、動画マーケターが効果を測る際に見ている指標は、再生回数(67%)がもっとも多く、次いでいいね・シェアなどのエンゲージメント(63%)、リード獲得・クリック数(52%)と続きます。

日本のBtoB企業を対象にした調査でも、最も重視するKPIは「再生回数・インプレッション数」が41.6%で最多。次いで「サイト遷移数(クリック数)」36.0%、「コンバージョン数(資料請求・お問い合わせ)」32.2%となっており、傾向はおおむね似ています。

一方で、日本の調査では「特に設定していない」という回答も18.2%ありました。動画は作ったものの、何をもって成果とするかが決まっていない企業も少なくないということです。

動画の企画段階で「この動画は何の数字を動かすためのものか」を決めておくと、振り返りがしやすくなります。

よくある質問

Q. 動画マーケティングは中小企業でも本当に効果がありますか?

A. 今回紹介したデータは、大企業に限った調査ではありません。日本のBtoB企業を対象にした調査で、制作予算「10万円未満」が最多だったことからも、必ずしも大きな予算がなければ取り組めないものではないことが分かります。まずは自社の強みが伝わりやすいテーマから始めるのがおすすめです。

Q. 何から始めればいいですか?

A. いきなり大掛かりな動画を目指す必要はありません。お客様の声や、担当者による商品説明といった、比較的少人数・短時間で撮影できるテーマから始める企業が多い傾向にあります。まずは1本作ってみて、反応を見ながら次の企画を考えていくというやり方でも十分にスタートできます。

Q. 海外の調査データは、日本の企業にもそのまま当てはまりますか?

A. そのまま当てはめるのは避けたほうが安全です。この記事で紹介したWyzowlの調査は海外企業が中心で、回答者数も266人と限られています。国内の実態を知りたい場合は、日本国内で実施された調査とあわせて見ることをおすすめします。傾向をつかむ材料として海外データを使い、予算感や具体的な進め方は国内データを参考にする、という使い分けが現実的です。

Q. SNSで話題になる動画と、SEOに強い動画は違うのですか?

A. 目的によって意識するポイントは変わります。SNSでは短時間で興味を引く工夫が重視される一方、検索から見つけてもらう動画では、視聴者の疑問に答える構成や、正確なタイトル・説明文が重要になります。「バズらせたい」のか「探している人に見つけてほしい」のかによって、企画の立て方から変わってくるため、目的をはっきりさせてから動画の形式を決めることが大切です。

数字は参考に、判断は自社の目的から

2026年のデータを見ると、海外では91%の企業が動画を取り入れ、日本のBtoB企業でも60.6%が効果を実感していることが分かります。

一方で、ROIの数字は前年から下がり、制作コストについては「高くなっている」と感じる声が最多でした。動画は「やれば必ず成果が出る施策」ではなく、目的と届け方をどう設計するかで結果が変わる段階に入ってきています。

弊社では、こうしたデータを踏まえながら、御社の強みを動画でどう伝えるかを一緒に考えるところから支援しています。「うちも動画を始めたほうがいいのか」と迷っている段階でも、まずはお気軽にご相談ください。

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LELコンサルティング
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