代表やスタッフが顔を出してYouTubeで発信している企業にとって、2026年は楽しみな年になりそうです。自分の顔からAIでショート動画を作れる機能を、YouTubeが公式に予告しています。

ただ、その話を聞いて「便利そうだけど、逆にうちの代表の顔が、知らないところで勝手に動画にされたらどうするの?」という不安がよぎった方もいるのではないでしょうか?

実はYouTubeには、その不安に応える仕組みがすでに用意されています。この記事では「類似性検出機能」でできること、設定の手順、そして現時点での限界まで、顔を出して発信する企業の目線で解説します。

「顔から動画を作れる」時代は、「作られる」時代でもある

YouTubeのCEOであるニール・モーハン氏は、2026年の年次レターの中で「今年は、自分の肖像を使ったショート動画の作成ができるようになる」と予告しています(YouTube公式ブログ・CEOレター)。

公式の発表で使われている「肖像」という言葉は、英語の原文では「likeness」。似ている姿かたち、そして肖像権という意味を持つ言葉です。要するに、自分の顔や姿を写した画像・映像のことだと考えて差し支えありません。

撮影の時間が取れない企業にとって、自分の顔から動画を作れるようになるのは、発信のハードルを大きく下げてくれる楽しみな変化です。

すでにYouTubeのAI制作ツールは、1日平均100万を超えるチャンネルが利用しているとされており、AIで動画を作ること自体は特別なことではなくなりつつあります。2026年のYouTubeの変化の全体像は、YouTubeの新機能「Ask YouTube」とは?2026年の変更点とあわせて解説で詳しく解説しています。

一方で、顔から動画を「作れる」技術が広がるということは、裏を返せば、誰かに顔を「作られる」リスクも広がるということです。だからこそYouTubeは、作る機能と同じタイミングで、守る仕組みも整えています。それが今回紹介する「類似性検出機能」です。

YouTubeの「類似性検出機能」とは

類似性検出機能とは、自分の顔がAIによって生成・改変された可能性のあるYouTube動画を、自動で見つけてくれる機能です(YouTubeヘルプ「YouTube の類似性検出」)。

仕組みは、音楽などの無断使用を自動で見つける「Content ID」と同じ考え方です。Content IDが著作権で保護されたコンテンツを探すのに対して、類似性検出機能が探すのは「登録した本人の顔」。いわば、Content IDの顔版です。

新しくアップロードされた動画を自動で1回スキャンし、登録したクリエイターの顔が含まれている可能性のある動画を検出してくれます。自分で膨大な動画を探し回る必要はありません。

設定場所は、YouTube Studioの「コンテンツ検出」の中にある「類似性」です。なお、この機能は現在試験運用版で、一部の国では利用できないとされています。

検出されたら、3つの対処から選べる

類似性検出機能が「あなたの顔かもしれない」という動画を見つけると、YouTube Studioの確認待ちリストに並びます。動画ごとに内容を確認して、次の3つから対応を選べます。

  1. 類似性による削除申請を提出する:動画がYouTubeのプライバシーポリシーに違反していると思われる場合。プライバシー侵害の申し立て手続きに沿って進めます。
  2. 著作権侵害による削除通知を提出する:自社のオリジナル動画が無断で使われていた場合はこちら。ただし、フェアユースなどの例外に該当しないか、送信前の確認が必要です。
  3. アーカイブに移動する:今は対応せず、様子を見る選択です。あとからアーカイブに戻って、申し立てを開始することもできます。

検出された動画は、視聴回数やチャンネル登録者数で並べ替えることができます。もし複数見つかった場合は、影響の大きいものから確認していく、という優先順位のつけ方ができるということです。

「勢いで削除申請をして、あとで気が変わったらどうしよう」という心配もいりません。削除申請は、送信後に届く確認メールの撤回リンクから取り下げることができます。

設定するには本人確認が必要

類似性検出機能を使うには、いくつかの条件があります。

  • 18歳以上であること
  • チャンネルの所有者またはマネージャーであること
  • 政府機関発行の身分証明書と、顔が写った短い動画(自撮り動画)を提出して、本人確認を完了すること

手順はシンプルです。パソコンでYouTube Studioを開き、「コンテンツ検出」→「類似性」→「今すぐ開始」と進みます。生体認証テクノロジーの利用に同意し、身元確認プロセスを完了すれば設定完了です。登録したい人が複数いる場合は、一人ずつ同じ手順を繰り返します。

本人確認がやや手間に感じられるかもしれませんが、これは他人があなたになりすまして登録するのを防ぐためのものです。提出した自撮り動画は、本人確認だけでなく、あなたの顔を検出するための参照データとしても使われます。

注意したいのは、確認の完了までに最長で5日ほどかかるという点です。また、チームで1つのGoogleアカウントを共有していると、名前の不一致で確認エラーになることがあります。メンバーそれぞれの個人アカウントをチャンネルの管理者として追加しておくのが、公式が案内している回避策です。

知っておきたい5つの制約

頼もしい機能ですが、万能ではありません。過度な期待や誤解を避けるために、現時点での制約も正直にお伝えします。

1:現在検出できるのは「顔」のみです。声は対象外です。公式ヘルプには「2026年には、音声の類似性検出にも対応できるように取り組んでいます」と記載されており、拡大の方向にはあります。

2:申請すれば必ず削除されるわけではありません。削除申請の審査では、コンテンツがパロディや風刺にあたるかどうかなど、複数の要素が考慮されます。

3:試験運用版のため、検出漏れがあります。公式も「ソフトウェアの調整は現在も進行中」と明言しています。自分で見つけた動画が検出リストに出ていない場合は、プライバシー侵害の申し立て手続きから直接報告できます。

4:AIではない「実際の映像」が表示されることもあります。他のチャンネルが、あなたの実際の動画を切り抜いて使っているケースなどです。この場合はプライバシーポリシーでの削除はできず、著作権侵害による削除通知で対応することになります。

5:登録したデータの保存期間は最長3年です。最後にログインした日から起算され、機能をオフにして同意を取り消せば、データはシステムから削除されます。

あわせて、安心材料もひとつ。検出の照合では動画に映っている他の人の顔もスキャンされますが、登録者と一致しなかったデータは直ちに破棄されると明記されています。登録していない人を特定するための機能ではない、ということです。

声を使われた場合はどうする?

「顔は守れるとして、声だけAIで合成されたら?」という疑問を持った方もいるかもしれません。実際、声だけを使ったなりすましが起こる可能性もあります。

前述のとおり、類似性検出機能が自動で見つけてくれるのは現時点で映像のみです。ただし、自分の声が使われた動画を発見した場合は、プライバシー侵害の申し立て手続きから個別に報告できます。

つまり現状は「顔は自動検出、声は自分で見つけて報告」という役割分担です。音声の自動検出が2026年中に加われば、守れる範囲はさらに広がります。

顔を出して発信している企業が、今から考えておきたいこと

最後に、企業として今のうちに整えておきたいことを3つにまとめます。

① 誰の顔を登録するかを決めておく

登録は本人ごとに必要で、本人確認も一人ずつ行います。代表だけにするのか、動画に出演する社員全員にするのか。出演の頻度と役割を踏まえて、先に決めておくとスムーズです。

② 本人確認は先に済ませておく

確認の完了まで最長5日かかります。何か起きてから慌てて登録しても、その間にアップロードされた動画はスキャンの対象になりません。転ばぬ先の杖として、発信を続けるなら早めに設定しておく価値があります。

③ 社内のアカウント管理を見直す

前述のとおり、共有アカウントのままだと設定でつまずくことがあります。この機会にチャンネルの権限を整理しておくと、担当者が変わったときにも困りません。

弊社が支援している企業でも、代表や社員が顔を出して発信しているケースは少なくありません。実際に、こんな声をいただいています。

「顔を出すことには最初抵抗がありましたが、出してみると、動画を見てくださった方との初回の打ち合わせでは距離が近くなりました」

「『この前の動画でお話しされていた件、私の場合はどうですか?』と質問されることが増えました。発信した情報を見てもらえているのが嬉しいです」

顔が見える発信は、動画を見てもらって終わりではありません。会う前から相手が自社を知っている状態をつくり、最初の会話の中身そのものを変えていきます。だからこそ、その顔を守る仕組みを知っておく意味があります。

なお、登録者数にとらわれない成果の見方については、YouTubeの登録者数が少なくても効果はある?企業担当者が気にすべき指標を解説で詳しく解説しています。

備えがあるから、安心して顔を出せる

AIで自分の顔から動画を作れる未来は、企業の発信にとって楽しみな変化です。そして同じタイミングで、顔を守る仕組みも既に動き始めています。

新しい技術のリスクだけを見て発信をやめてしまうのは、もったいない選択です。顔が見える発信は、会社の信頼につながる強い手段であることに変わりはありません。備えを整えたうえで、安心して顔を出していきましょう。

弊社では、企業のYouTube運用を、チャンネルの設計から日々の発信・分析まで伴走して支援しています。「顔出しでの発信、うちはどう進めるべきか」という段階のご相談でも、まずは状況を一緒に整理するところから始められます。お気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

LELコンサルティング
LELコンサルティング
最新のニュースや業界動向をわかりやすく解説しています。机上の情報だけでなく、実際の運用経験に基づいた視点をお届けします。
大切にしているのは、無理なく続けられる持続可能なマーケティング施策。実践を通して、少しずつ運用方法を身につけていけるような伴走支援をご提供しています。
SEOを始めとするWeb集客支援にご興味がある方は、ぜひLELにご相談くださいませ!