「AIで下書きはできたけれど、書かれている内容が本当に合っているのか、確かめ方が分からない」——そんな状態で公開ボタンの前に手が止まったことはありませんか?
AIの書く文章は、正しいときも間違っているときも同じくらい自信たっぷりで、読んだだけでは見分けられません。
この記事では、AIで書いた記事のどこを疑えばいいのか、特に危ない4つのパターンと、弊社がAIの下書きで実際に見つけた「10倍の誤り」の実例、公開前チェックの手順までをまとめました。
目次
AIが間違える理由も、減らし方も、開発元が公開している
AIが事実と違う内容をもっともらしく答えてしまうことは、「ハルシネーション」と呼ばれています。
これは隠された欠陥ではありません。AIを開発している会社自身が、なぜ起きるのか、どうすれば減らせるのかを公式サイトで説明しています。
OpenAIの「Why language models hallucinate」では、原因を学習と評価の仕組みから説明しています。正答率だけで採点されると、モデルは「分かりません」と答えるより、当てにいくよう促される。いまの採点のやり方そのものが、不確かさを認めるより推測を評価してしまう、という指摘です。GPT-5では減っているものの、それでも起きるとしており、ハルシネーションは大規模言語モデルにとって根本的な課題だと書かれています。
どんな形で表に出るのかも公開されています。Googleの公式ドキュメント「Gemini for Google Cloud and responsible AI」では、もっともらしいけれど事実と異なる出力を生成する場合があるとしています。一度も存在したことのないウェブページへのリンクを作ってしまう例も挙げられています。Geminiアプリのヘルプにも、不正確な情報を事実として提示する場合があると書かれています。
ハルシネーションを減らす方法も公開されています。Anthropicの「Reduce hallucinations」で紹介されているのは、AIへの指示の出し方です。「分からないときは分からないと答えていい」とAIにはっきり許可すると、誤りが大きく減るとされています。長い文書を扱うときは、先に原文の引用を取り出す工程をはさんでから、その先の作業に進む。主張ごとに出典と引用もセットで出力する形にして、あとから確かめられるようにする。ただし、こうした方法でも完全にはなくならない、とも明記されています。
「分からない」と答えるより当てにいくよう促されるのが原因なら、「分からないときは分からないと答えていい」と伝えるのは、その原因に直接向き合う方法です。AIの誤りは、手のつけられない性質ではなく仕組みから来ているので、伝え方で減らせる部分があります。
そのうえで、完全にはなくならないとも各社がそろって書いています。AIが進化しても、確認が要らなくなるわけではありません。減らす工夫をして、最後は人が確かめる。使い方はもう決まっていると考えたほうが、前に進めます。
特に危ない4つのパターン
原稿のすべてを疑いながら読むのは無理がありますが、誤りが混ざりやすい場所は、あらかじめ絞り込めます。危ないのは次の4つです。
具体的な数字・割合。たとえば「国内のロボット掃除機の普及率は47%」のような、ありそうな数字が返ってくることがあります。実在しない数字でも文章の流れに自然に収まるので、読んだだけでは気づけません。
法律・条文。存在しない条文番号が出てきたり、改正される前の古い内容がそのまま入っていたりすることがあります。広告表現のルールなど、事業に直結する分野では特に注意が必要です。
人物・組織の発言。「〇〇社の代表は『△△』と述べています」と、実際には語られていないコメントが出てくることがあります。カギカッコ付きの引用は、それらしく見えてしまいます。
最新の出来事。AIは、学習した時点より後のことを基本的に知りません。それにもかかわらず、返ってくるのは「知りません」ではなく、古い情報をもとにした答えです。料金改定やサービスの仕様変更など、動きの速い話題ほど、この形の誤りが混ざります。
実例:下書きの数字が10倍ずれていた
弊社でも、リサーチや文章の作成、シミュレーションなどにAIを利用することがあります。社内資料をまとめていたときに、実際にあった話です。
海外の統計を引用した下書きの中に、原文で「200 billion」とある数字が「200億」と書かれていました。billionは「10億」なので、正しくは2,000億。10倍のずれです。
その数字を使った増加率の計算は、合っていました。元の数字が10倍ずれていても、割合は変わりません。日本語の文章としても自然で、何度読み返しても違和感がない。気づけたのは、仕上げる前に原文(一次情報)と数字を照らし合わせたからでした。
弊社の場合、単位の換算でずれが起きました。billionと億、ドルと円。数字そのものではなく、単位を置き換えるところでした。もっともらしくて、計算も合っている誤りは、原文に当たるまで残ります。
シミュレーションを頼んだときには、足し算や%のような簡単な計算そのものが違っていたこともありました。むずかしい計算ではないので、正直おどろきました。
公開前チェックの手順
最初に、数字を一次情報と照らし合わせます。AIに「出典を教えて」と聞くだけでは安心できません。実在しないURLが返ってきたり、開いてみるとそんな数字はどこにも書かれていなかったりします。必ず自分でリンクを開き、元の数字を目で確認します。
次に、単位と桁の換算を確かめます。billionは10億、millionは100万。先ほどの実例のとおり、ここは見落としやすい部分です。増加率のような計算結果も、元の数字から自分で計算し直します。
そのあと、発言の引用は原文を確認します。元のインタビュー記事やプレスリリースを探し、本当にその言葉で語られているかを見ます。見つからない引用は、使いません。
最後に、「〜とされています」「〜と言われています」の出どころを確認します。誰が言っているのか分からない文は、AIが作った可能性を疑う。出どころが見つからなければ、削るか自分の言葉で書き直します。
ちなみに、検索ボリュームのようなツール系の数字も、AIの答えをそのまま使うのは危険です。ツールの画面を自分で開いて、実際の数字を確かめましょう。
全文をチェックするのは大変に見えますが、対象を「数字・固有名詞・引用」に絞れば、記事1本ぶんでも現実的な作業量に収まります。
手間をかける価値は、読者からの信頼だけではありません。出どころが明確で正確な記事は、AIO(LLMO/AI検索対策)の面でも強くなります。AI検索は出典を参照しながら回答を作るため、数字の裏付けがはっきりした記事ほど引用されやすいと弊社は見ています。
AIにファクトチェックを任せるときの限界
「そもそも、チェック自体もAIに頼めばいいのでは?」と思いませんか? 半分は正解で、半分は不正解です。
AIに「この記事に誤りはありますか?」と聞くと、「特に問題は見当たりません」と返ってくることがあります。この答えは、ウェブ上の一次情報と一つひとつ照らし合わせた結果ではないからです。
AIの役割は「疑わしい箇所の洗い出し」まで。合格の判定は人が持つ、と決めておくと迷いません。
洗い出しには、次のようなプロンプトが使えます。「この記事から、出典が書かれていない数字、断定して書かれている最新情報、単位や桁の換算を含む数値を、すべてリストアップしてください」。
こうして挙がった箇所を、先ほどの手順で人間が一次情報に当たって確認する。この分担なら、AIの速さと人間の確かさを両方活かせます。
公開前にAIへ原稿を通す使い方は、AI時代の検索意図とは?正しく伝えるコツとプロンプト例つきで解説でも紹介しています。あわせて読むと、事実の誤りと内容のずれを、同じ流れで確かめられます。
体制の話:書く人と確認する人を分ける
手順を整えても、まだ穴が残ります。書いた本人のチェックには限界がある、という穴です。
自分が関わった文章は「合っているつもり」で読んでしまいます。AIとやり取りしながら下書きを作った人は、その内容を一度受け入れているので、思い込みごとチェックを通過させやすいのです。
弊社では、執筆と校閲の担当を分けています。校閲の担当は執筆に関わらず、完成した原稿だけを新しい目で読む。先ほどの「10倍の誤り」に気づけたのも、この分離があったからです。
「うちは少人数だから、分けるほど人がいない」という場合でも、工夫はできます。一晩置いて翌日の自分に確認させる、数字と固有名詞だけ他の人に見てもらう、といった小さな分離でも効果があります。
記事作成を外注するときも、確認すべきは「AIを使っているかどうか」ではなく、「書く人と確認する人が分かれているか」「事実確認の工程があるか」です。AIの利用そのものは問題ではありません。
AIは「確認とセット」で使えば戦力になる
AIの誤りを恐れて使わない、という選択はもったいないと弊社は考えています。下書きの速さは本物ですし、誤りの混ざる場所と確かめ方が分かっていれば、正確さは守れます。
数字・固有名詞・引用を一次情報と照らし合わせる。単位の換算は自分で計算し直す。AIには洗い出しまでを頼み、合格の判定は人が持つ。そして、書く人と確認する人を分ける。この4つがそろえば、AI活用と正確さは両立できます。
弊社では、AIを活用した記事制作を、執筆と校閲を分けた体制で行っています。「AIで記事を作りたいけれど、正確さに不安がある」という段階から、お気軽にご相談ください。
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